この作品は、タイ最北端の街メーサイにあるコンティップ村についてのドキュメンタリーです。同村ではタイ少数民族のアカ族の子ども達が、創設者のイタリア人神父に支えられて、互いに助け合いタイ社会で働いていけるよう大勢で生活し、勉強しています。作品では、母をエイズで亡くし、まわりの人たち助けられて成長していく少女を中心に描かれています。
三浦淳子監督が、上映に先立って「今日はお越しいただいてありがとうございます。この映画は2000年に初めてこの村を訪れ、その後7年間の撮影、編集を経て完成しました。子どもたちの日常の様子をゆったりとした気分で楽しんでほしい。」と舞台あいさつ。
上映後のゲストトークでは、まず、映画の冒頭に出てきたアカ族の民族衣装を着たボランティアがステージに上がり、三浦監督がアカ族の女性は魔よけのために普段から民族衣装を身につけいることなどを説明。また、着てみた感想を聞かれたボランティアは、「見た目よりは重くないですが、耳もとで音がします。」と笑顔で答えました。
続いて映画の話題に移り、制作のきっかけを聞かれると「最初は旅行で現地を訪れました。言葉も通じないので浮いてしまうのではないかと懸念しましたが、子どもたち始め村の人たちは話しかけたりして私の存在を気にかけてくれました。日本では自分のことしか考えていない人が多くいると思い、皆さんにこの村の雰囲気を感じてもらいたいと思い立ちました。村の神父さんには言葉も通じないのに映画が撮れるのかと驚かれました。」と語りました。
タイでの撮影で心がけたことについて聞かれると、「日本にいるときにタイ語を週一回勉強しに通いました。私から話かけると向こうからもどんどん話しかけてくれるようになりました。撮影するときには、監督という存在を消して空気のようになり普段の表情や生活を撮るように心がけています。」と述べました。また、プライベート・ドキュメンタリーにこだわる理由について、「私自身と他者との関係でしかできない映像を撮りたいと思ったからです。他の人には出来ない自分だけの作品と作ることで自分の存在を確認したかったという理由もあります。私の個人的な感情を見てもらいそれを感じてもらえたらうれしいです。」と答えました。
今後は、「私は映画を見ることも大好きなので、映画館で映像を見る楽しみもまた伝えていきたいです。一人から多くの人へと伝わっていくような映像を撮っていきたいです。」と抱負を語りました。
その後、会場からのタイの経済や学校の状況、映画の中の疑問点など様々な質問が寄せられ、和やかな雰囲気の中、ゲストトークは終了しました。
(平松)