映画祭初日、国外初上映の韓国作品「飛べ、ペンギン」が大会議室にて上映されました。この作品は4話からなるオムニバスで、過熱する教育問題や偏見、熟年離婚など、韓国の日常で現実に起きている問題をテーマにしています。昨年公開の「私たちの生涯最高の瞬間」で2008年の観客賞を受賞したイム・スルレ監督が、韓国社会の抱えるこれらの問題を客観的に、しかし時に優しく描いています。上映後にはイム・スルレ監督、第4話に出演した俳優のチョン・ヘソンさんによるゲストトークが行われました。
Q この映画では、共感できるセリフが多いと感じましたが、どうしてでしょうか?
イム・スルレ監督 今回の映画は商業用ではなく、韓国の人権委員会からの依頼を受けて制作したものです。人権をテーマにした映画というと難しい印象を与えてしまうので、おもしろく、共感を持てるようにつくりました。私自身は結婚歴がなく子供もおらず、また両親も仲が良かったため、今回の映画で問題になっているテーマには関わりがなかったので、まわりの方から話を聞きました。また、私はベジタリアンでお酒も飲まないので、第2話の問題とは直接関わりがありました。
Q 今回チョン・ヘソンさんをキャスティングした理由は何でしょうか?
イム・スルレ監督 この映画において第4話は1番長く、重要な役割を占めています。第4話は熟年離婚をテーマに扱っていますが、老夫婦のケンカをかわいらしく撮りたいと思い、チョン・ヘソンさんはかわいらしく好感の持てる演技が出来る方だったので選ばさせてもらいました。チョン・ヘソンさんは200、300%の演技をしてくれました。
Q 今回チョン・ヘソンさんは出演料なしで映画に出演したそうですが、なぜでしょうか?
チョン・ヘソンさん 私はあと1年半で女優人生50年目を迎えます。これまで出演料をもらって様々な作品に出演しましたが、今までを振り返りなにか恩返しをしたいと考えました。そこで今回の作品のお話が来たときに、ボランティアとして参加しながら、監督、スタッフのみなさまと一緒に一つの作品を作り上げたいと思ったのです。私は近年ドラマに出演することのほうが多いのですが、映画は芸術作品であるという思いから、テレビドラマとはまた違った心積もりが必要でした。今回の出演は大変有意義に、楽しく行えました。
Q 今後はどんな活動を行いたいですか?
イム・スルレ監督 昨年制作した『私たちの生涯最高の瞬間』は商業用のものであり、今年の『飛べ、ペンギン』は人権問題を扱った作品ですが、次の作品は芸術を追求した作品を制作する予定です。また、ドキュメンタリーにも挑戦したいと考えています。
チョン・ヘソンさん 2011年で女優活動が50年目になり、今まではドラマで活躍することが多かったのですが、今後は演劇にも挑戦していきたいと思っています。「母」ということばは、もっとも素晴らしいことばであると考えられており、韓国の演劇界では「母」をテーマにした舞台が多くなってきています。私もまたそのような企画を立ち上げたいと思っています。また、今度からは、ドラマもライトタッチのものにも参加しています。
この作品は9月6日(日)14:00よりウィルホールで再び上映されます。また、プロデューサーのナム・ギュソンさんが上映後ゲストトークに参加予定です。
(河口)