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9月2日 「女のみづうみ」吉田喜重監督と俳優の岡田茉莉子さんの舞台挨拶

2009/09/02

 映画祭初日の大会議室の作品は「女のみづうみ」で、吉田喜重監督と妻であり女優の岡田茉莉子さんが上映前に舞台挨拶。
 吉田監督は、「「女のみづうみ」は1964年に作った作品で、45年前のことを考えると感無量です。時代とともに忘れ去られ、このように古い作品がどう受け止められるか、不安と期待の気持ちでおります。」と今の心境を語りました。また、「この作品は、私が松竹から独立して結婚と同時に初めて作った作品で、以前から興味のあった川端康成の小説で作りました。川端さんの作品は、『雪国』に代表される光を描いた作品もありますが、原作『みづうみ』のようにその裏返しの闇の世界を描いた作品もあります。私は後者の方により興味をもったわけで、またこの分野の作品はまだ映画にはなっていなかったので挑戦しようと思いました。」と、当時を思い出しながら川端さんへの思いを込めて語りました。
 「これは今風に言うと、見知らぬ男が女を付け回すストーカーの話です。岡田には主人と不倫相手の二人の男がいるのですが、金持ちの主人に買われた岡田は不満を抱き不倫をします。一人の女性が全く違う立場の男性と関係をもっていくところが見所です。セックスは男性側から見たセックスであり、女性は対象でしかありません。女性から見たセックス、また中間にセックスを置いた男女の関係こそ、対等になるでしょう。33歳だった当時、正義について考えてほしいと考えてしまいました。」と述べ、「映画を作ったのは私ですが、結論を出すのはこれから映画を見ていただく皆さんです。皆さんがこの映画を見て、何か不思議と訴えるものを感じることこそ本当の映画のコミュニケーションなのです。」と観客へメッセージを送りました。
 岡田さんも「川端さんとは深い関係がありまして、18歳でデビューしたときの作品『舞姫』も川端さんの原作でした。中でも親切にしていただいたのは、谷崎潤一郎さんに書いていただいた亡き父の弔辞が売りに出ていたのを買い取って、私の手元に届けてくれたことです。今年ついに自伝を書き終えて10月29日に書店に並ぶことになりましたが、ここに詳しく書いてあります。」と、川端さんとの思い出について語ってくれた。そして「女のみづうみ」はとても大事な作品の一つであるとともに、30年以上も前に今でこそ問題になっているストーカーを取り上げたことは、我が夫ながら素晴らしいと思っております。」と言って観客の笑いを誘いました。
 最後に、「この作品は、きっと今見てもとてもスリリングで、ラストも面白いと思いますので満足ただけるのではなかと思います。」と岡田さんが述べると、吉田監督は「女性は大変だとか、波乱万丈だとか思われるかもしれません。今、現実ではストーカーから逃げて逃げて不幸になる話がありますが、この作品では逆にストーカーが追い詰められてしまいます。この作品は私にとっての女性映画なので、このように男性に逆襲する強い女性の姿を描いています。」と結びました。
(小川)